ヒア アフター(Hereafter:2010年:米) [Movie(映画・DVD)]
クリント・イーストウッド監督、スティーブン・スピルバーグ制作総指揮の臨死体験と魂に関する異色の作品。
重いテーマを取り扱った内容ではあるが、全体的に温かな心和む作品となっている。
死後の世界を見る、魂と対話するという力を持つ主人公(本作ではマッドデイモンが好演)への周囲の奇異の目と、彼らの苦しみ。こういった描写は、『シックスセンス』に通じるものを感じた。
フランスの哲学者ジャンケレヴィッチ は死を「一人称の死」(自分の死)、「二人称の死」(近親者の死)、「三人称の死」(他人の死)と3つに分類した。一人称の死は、語ったり、思いめぐらすことはあっても最終的に体験できない。死後のことは周囲の者に委ねるほかない。
本作はこの一人称の死を、津波によって臨死体験を期に、花形キャスターの座を手放すことになるフランス人ジャーナリストを通して描く。通常私たちは、この一人称の死を体験することなく人生を終える(体験=死になるからだ)。
二人称の死が、大抵の場合、私たちにとって最も辛い死となる。この二人称の死をロンドンに住み、兄を交通事故で失う双子の弟を通して描く。
そして、三人称の死を自らの霊能力故に自らを苦しめることになる主人公を通して描いているのだ。
人生は一方通行で、いずれ誰もが終わりを迎える。その後のことは、各々が考えるようになるのだろうが、稀に瀬戸際から戻ってくる人もいるようなので、そういった人たちのコトバに耳を傾けることもまたよいのかもしれない。
死を考えること、それはすなわち、生を考えることに他ならない。『面白くことなき世を面白く・・・』高杉晋作辞世の句よろしく、苦楽こそ生と思えれば、幸せなのかもしれない。
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