新少林寺/SHAOLIN（2011年：中国・香港合作）

「ハ―、ハー、ハッ、ハッ！」という掛け声と共に少林拳の稽古に励む僧侶の華麗な動きが印象的な映画「少林寺」。

ジェット・リー（リー・リンチェイ）の出世作でもある元祖「少林寺」が公開されたのが1982年 。約20年の時を経て邦題「新・少林寺」が2011年に公開された。元祖のリメイク版ではなく、舞台背景を「隋朝末期」から「清朝末期」の辛亥革命後に移した全くの別ストーリーである。

本作品の特徴は、いわゆる勧善懲悪モノではなく、近年の中国・香港作品に多くみられる善悪転生型というか善悪混在型というか、いわゆる人間の内面に深く切り込んだ内容となっているといえよう。

典型的なカンフーアクション娯楽作品の流れを汲めば、弱者を救う少林寺の僧侶達（善）と民衆を苦しめる軍閥（悪）という構図で最後は悪が滅ぶというパターン。

しかしながら、本作では、先の悪の首領が、善に転じ、新たに生まれた悪と戦い、最後には自らの命を賭してその悪を救うというなんとも切ない脚本になっている。

少林寺だけに、独特の仏教観に基づく作品に仕上がっているといえよう。

その辺りは、韓国ドラマなどにもみられる復讐劇の悲しい結末に通ずるものがある。ハリウッド系の作品では、憎い敵を討つまでの流れの多くは聴衆を魅了し、最後に敵をやっつけると、皆がスカッとするのだが、中・韓系では、その果てにある主人公のみが感じ得る独自の虚しさや、破滅を描くケースが多く、観るものに一抹の後ろめたさを訴える。日本のドラマでも菅野美穂主演の「ギルティ」などもそういった主人公の最後の悲しさを描いている。

本作品、カンフー映画としても十分楽しめるが、勧善懲悪のスカッと感を求めるには、少々内容の深い作品に仕上がっている ので、観終わった後に少林拳でふざけるという気にはなりにくい大人の少林寺といえる。

新少林寺/SHAOLIN スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]

• 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
• メディア: DVD

少林寺 [DVD]

• 出版社/メーカー: キングレコード
• メディア: DVD

 

 

タグ：少林寺