インビクタス/負けざる者たち(Invictus:2009年:米) [Movie(映画・DVD)]
「我が運命を決めるのは我なり、我が魂を制するのは我なり」
劇中マンデラが何度も口にする詩。英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩「インビクタス」の一節だ。
南アフリカ共和国は周知の通りアパルトヘイトにより長く人種隔離政策が行われた国家だ。
1994年ネルソン・マンデラ氏(モーガン・フリーマン)が大統領に就任し、人種隔離政策を撤廃するが、国民感情の融和までには長い道のりが待っている。そんな中、南アフリカが1995年ラグビーワールドカップ開催国と選ばれていたことから、ラグビーの強国でありながらアパルトヘイトによる国際舞台での活躍ができなかった代表チームの活躍に国民が一体になって応援することを期待する。
大統領にワールドカップ優勝を託されたスプリングボクス主将のフランソワ・ピナール(マット・デイモン) は、大統領の願いを果たすべく白人主体のチームに祖国のために闘うよう説得するのだが・・・。
スポーツを題材にした映画は多数あるが、ラグビーを取り扱った作品は珍しい。
ラグビーといえばイギリスが本場。現在も強国はかつてイギリス植民地化にあった国々が名を連ねる。南アフリカ共和国もそのうちの一つだが、アパルトヘイトによる国際社会からの孤立によって、ラグビーも伝統的に強豪国でありながら、国際舞台から遠ざかっていたのである。
そんなチームがワールドカップで活躍することで、国民感情の融和が進むことを願うマンデラ大統領とスプリングボクスの選手たちの交流を中心に、大統領を取り巻く官僚、家族、ボディーガード達の心理などを描き、スポーツ一辺倒ではないところが本作の魅力の一つとなっている。
下馬評を裏切り、決勝戦に進んだボクスが実力ナンバーワンのニュージーランド代表オールブラックスと対戦するシーンは、ラグビーの面白さを存分に伝えると同時に、これまで白人チームを応援することのなかった黒人たちが夢中になって応援する様は、国が一体となってチームを応援する大統領の願いが実現した姿を象徴するものだ。
折しもソチ冬季五輪が行われている中、スポーツの持つ力を改めて感じさせる作品である。
その一方で、冒頭の詩、「我が運命を決めるのは我なり、我が魂を制するのは我なり」。これは、いかなる困難にも立ち向かう精神と共に、何者にも支配されないという決意の詩である。悪しき慣習、前例、常識・・・、それらを覆すには、まず何が必要か。そんなことまで考えさせられるストーリーだ。
監督クリント・イーストウッド、主演モーガン・フリーマン、マット・デイモン
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